カラフルハート

「山本さん……僕と付き合ってくれませんか」

そう告白されている夕方4時32分。

相手は谷中 瞬(やなか しゅん)くん。

私の成績学年1位の座を、揺るがした相手。

話した事のないライバル。

正直、異性として意識した事すらない。

寧ろ、中学時代永年学年1位だった私を、高校に入って以降ずっと、2位に引きずり落とした因縁(というと大袈裟だけど)の相手とすら思っていた。

「……好きな人いた事ないの。初恋もまだで……」

恥ずかしながらこれは本当。

まさか、告白の言い訳に使える日が来るとは……何とも複雑。

「山本さんが僕の事を意識してないのは知ってたんだ」

じゃあなぜ告白したんだ……。

という考えが顔に出てたのだろう。

谷中くんがこう続けた。

「それでも、少しでも意識して欲しくて。その為に何もしないのは嫌だったんだ。」

そういう彼の顔は、どこか申し訳なさそうで、苦しそうで。

恋って、もっと楽しくて笑顔になれるものなんじゃないの?

人生を彩るにあたって、暖色みたいな存在じゃないの?

何で、谷中くんはそんなに悲しそうな暗い顔をするの?

そんな事を考えて答えを出せずにいると、谷中くんはごめん、またね、と去って行ってしまっていた。






その夜。

私は七瀬に相談する事にした。

「もう〜!!どうしよう〜?七瀬助けて〜!」

「どうしたの?」

「谷中くんが〜」

「そんなぐずった声して。谷中くんって谷中瞬の事?」

「・・・うん」

「で?谷中くんがどうしたの?」

「・・・・・・」

「虐められたの?」

「そんなことするような人に見える?」

「・・・喧嘩した?」

「あんまり喋らないもん」

「・・・じゃあ何をされたのよ?」

「・・・告られた」

「ぶっ・・・いいじゃん!!よかったじゃん!!」

七瀬面白がってるでしょ?

そんな場合しじゃないのに!!

初めて告白された私の身にもなってよ!!

「笑わないでよ!それにいい報告だったらこんな電話しないよ!」

「そうだよね。なんて返せばいいか迷ってるんでしょ?」

「うん」

流石七瀬。話が早い。

「自分の思いそのまま伝えたらいいんじゃない?」

自分の思い……。

「わかった」

七瀬のアドバイスを元に、自問自答して悩む。

告白された時に感じた疑問と共に。

明日、谷中くんに伝える言葉は、何も変わりはしないのに。