身代わり令嬢の、おしごと。

最初の失敗は、歩き方だった。

「背筋を伸ばして。視線はまっすぐ前」

そう言われて一歩踏み出した瞬間、花はつまずいた。

「――あっ」

小さく声を上げ、慌てて姿勢を直す。

「す、すみません……」

反射的に頭を下げてしまい、すぐ後悔する。

「令嬢は、謝る前に微笑むのよ」

花はぎこちなく口角を上げる。
でも、どう見ても不自然だ。

「……先は長そうね」

少し離れた場所で、麗奈が苦笑する。

花は、恥ずかしさを飲み込んで前を向いた。
ここで逃げたら、意味がない。

「もう一回、お願いします」

そう言った声は、
自分でも驚くほど、まっすぐだった。