――苦しいよ。
なんでこんなに苦しんだろ。
走馬灯のように、様々な景色が頭を駆け抜けていく。
「ごめんね、レベッカ」と笑うお兄様の顔。
お兄様は、妹よりも婚約者を選んだ。それだけだ。
お兄様がいなくなって、おかしくなった我が家。
お母様は閉じ籠り、ぶつぶつとおかしなことを口走るようになった。
昔は、あんなに仲の良い家族だったのに。
お父様なんて、「お前は大事な道具だからな。ドランバーグ家存続のために必要だ。」と言って私を閉じ込めた。この小さな部屋に。
お庭に出たいよ。
きっともうすぐバラが咲くんだから。
庭師が言っていたのを聞いていたのよ。
みんな大好きな、ドランバーグ家の象徴、白いバラ。
優雅で気品があって、ちゃんとトゲも持っている。
そんな家なんだから。
そのトゲは家族を守るために使うの。
家族を傷つけるために使ったりしないんだから。
そういう伝統を持った家だって本に書いてあった。
覚えているのよ。
……あれ?
私って本が読めたっけ?
まだ家庭教師も雇っていなかったはずよ。なら……どうして?
どうして、本を読んだ記憶があるの。
