「俺…亜里沙を抱いたんだ」

「…な…んですって?」

「おまえの結婚式の夜、亜里沙を抱いた。
亜里沙は失恋した俺の心を救いたいと言った。
…俺は…あの夜独りでいたくなかったんだ」

俺の言葉が終わるや否や頬に熱い衝撃が走った。

叩かれた頬が赤く腫れてジンジンと痺れたが、心の痛みに比べたらそんなものは痛みの内に入らなかった。

陽歌が俺を睨みつけ、声を震わせて怒っているのを見て、自分を責めて亜里沙が戻ってくるのならどれだけでも殴ればいいし責めて欲しいと思わずにいられなかった。

「拓巳…あんたって最低ね。
亜里沙がどんな気持ちであんたを見ていたと思っているの?」

「…な…に?」

「いくら鈍い私でも気付いていたわよ。
亜里沙が必死に隠していたから気付かないフリをしていただけ。
亜里沙には彼なんていなかったのよ」

「知っているよ。あいつ…一体なんであんなウソをついたりしたんだよ」

「わからない? 私達のためよ」

「俺達?」