「6年って長かったよな…。
ずっと応援してくれたのに、いい結果を出せなくてごめんな。
俺の恋を最後まで見届けてくれて…ありがとうな」

耳に近いところで聞えた拓巳の声は低く、擦れていた。

涙は流さなくても、心が泣いているのだと思った。

「拓巳…泣いてもいいんだよ。
陽歌が幸せでも拓巳は幸せじゃないでしょ?
だったら本音を言って?
辛い気持ちは吐き出さないと苦しくて息も出来なくなってしまうよ」


拓巳にそう言いながらも、その言葉は自分自身の心をも貫いていた。

拓巳への想いが苦しくて息も出来ないくらいで…吐き出したいのにそれも出来ない。

拓巳…あなたが好き…。そう伝える事が出来たらどんなにいいだろう。

「私が支えてあげるから。
…お願い、無理に自分を抑えて笑わないで。
そんな拓巳を見ているのは辛いの」


私は…本当にどうかしていたんだと思う。

『私が支えてあげる』なんて、いつもだったら決して口にしなかっただろうに…。

陽歌の結婚が私の中の何かを変えてしまったのかもしれない。

陽歌なら拓巳を幸せにしてくれる。そう信じて溢れるほどの想いを封印してきた。

けれど今、心を封印していた鍵は陽歌という存在を失って壊れてしまった。

自分の感情がコントロールできないほど、私の心は追い詰められていたのかもしれない。