「信じられねえな。亜里沙が片想いって…嘘だろ?
目ぇ悪いんじゃねぇか?
バカな男もいるんだな」

「…いるのよ、バカな男がね。
私の気持ちになんて全然気付いてなくて、他の女をずっと愛しているの」

「おまえもそんな奴諦めればいいのに。」

亜里沙は大きな溜息を吐き、本当にそう出来たらいいのに…と呟いた。

彼女のそんな呟きを聞きながら、俺も人のこと言えないけどな…と呟いた。

「亜里沙、おまえすぐに仕事に戻るのか?
時間も時間だし、一緒に昼飯食ってから戻らねぇか?」

「うん、いいよ」

「月末だし経理も大変だよな」

「うーん。それもあるけど、2時に陽歌から引き継いだハネムーンの引渡しがあるんだよね。
ハワイの現地ウエディングの第1希望がまだ取れなくて困っているのよ。
ギリギリまでキャンセル待ちを掛けて第2希望で抑えてあるんだけど…あと10日で取れるかしら? 不安だわ。
それに今度の団体の確認もしなくちゃいけないからね。残業覚悟だなぁ」