「――ったく!もっと亜里沙を大事にしてよね。
拓巳が代わって出産してみたらどうなのよ」
ムチャクチャな事を言いつつ、陽歌が俺にジロリと冷たい流し目を送ってくる。
子どもと桜のダブル癒し効果も、かなり俺にご立腹の彼女には効果は薄いらしい。
あれ以来陽歌は俺に対してやたらと手厳しくなった。
今日は、俺が添乗で出産に立ち会えなかったことに憤怒しているのだ。
もちろん怒っているのは俺限定で、俺を庇って陽歌を宥める亜里沙に対しては相変わらず優しいし、息子にいたっては一目でメロメロの状態だ。
「…まあ、亜里沙に免じて許してあげるわよ。
無事に生まれたんだし。
でもね…もっと亜里沙を大切にしてよね?
流産せずに無事出産を迎えられたから良かったけど、出産までも入退院を繰り返していたんだし、まだ貧血で大変なのよ。
産後は拓巳がサポートしてあげないと、亜里沙が倒れちゃうじゃない」
陽歌が大きく膨らんだおなかを擦りながら溜息をついた。
彼女はあと2ヶ月で出産を迎える。
妊婦をここまで怒らせて破水でもされたらと、そっちのほうが俺としては心配だったりする。
陽歌に何かあったら、晃先生に殺されるだろうな、俺。