窓の外は満開の桜が風に煽られ花吹雪を散らしている。

亜里沙を連れ帰ってすぐに俺達は籍を入れ、二人で暮らし始めた。


季節は3月。

病室の窓から早咲きの桜が少し早い花見を楽しませてくれる美しい風景の中、春の日差しに祝福されるように俺達の息子は産声を上げた。

窓の外を彩る美しい薄桃色は椿寒桜とかいう早咲き品種らしい。

この産婦人科の院長には拘りがあるらしく、生まれてくる子ども達を迎える花として、どの季節にも桜科の花が咲くように庭を彩っているのだそうだ。

桜には癒しの効果があるのだろうか。

幻想的な風景に天使の微笑を浮かべる俺達の息子を見ていると、とても幸せな気持ちになる。

母親に抱かれ無垢な瞳で微笑む純真な魂。

その場にいるだけで、誰もが癒され微笑まずにはいられなくなる。


…そう誰もが…


多分、そうなるはずなのだが…