でもまだ、心に不安は残っていた

彼に妊娠の事実を告げなければいけない。

抱きしめる腕の強さに対し腹部が圧迫されないことに、もしかしたら拓巳はすでに知っているのかもしれないと思い始めていた。

妊娠が拓巳の枷になって、私を愛していると思い込んでいるだけなのではないかと不安が込み上げてくる。

それに、もし知らなかったら…? 

それでも私を受け入れてくれるだろうか。

なかなか言い出せず、何度か深呼吸を繰り返していると、拓巳も私が何かを伝えようとしていると気付いたようだ。

逃げない程度に抱きしめた腕を緩め、瞳を覗き込み「どうした?」と訊いてくる。

真摯に見つめるその瞳の前に、逃げ出すことなどできなかった。

「拓巳、私…あなたに言わなくちゃいけないことがあるの…」

「ん?」

「あのね…私…赤ちゃんが…」

「うん、知ってる。だから走るなって言っただろ? 身体大事にしてくれよ。お前の身体はもうお前だけのものじゃないんだから」

張り詰めていた気持ちが緩んで身体から力が抜けた。

へたり込む私を拓巳はしっかりと支えてくれる。