驚いて振り返る亜里沙を強く引き寄せる。

勢いで胸に飛び込んでくる彼女をそのまま強く抱きしめた。

フワリと立ちのぼるエゴイストの香り。

亜里沙がこの香水をつけている理由がようやく分かった。

この香りがおまえにとって俺の代わりだったんだな。

告げられない想いを胸に秘めたまま、俺の香りを身に纏って独りで生きるつもりだったのか?

そんな事は絶対に許さないから…。

「た…くみ…。どうして…?」

俺を見上げる亜里沙の瞳には戸惑いの色。

俺の心の変化など何も知らない彼女にとって、俺の行動は予想外の事だったんだろう。


ずっと聞きたかった亜里沙の声。

ずっと欲しかった温もり。

やっと手に入れた。


「亜里沙…やっと捕まえた」