ペンションでじっと朝まで待つなんて、とても無理だった。

山崎さんを説得すると、直ぐにタクシーを呼んで病院へ向かった。

病院の向かいの路地から、教えてもらった病室の位置をじっと見つめる。

病室を見ているだけでも、このひと月極限まで高ぶっていた感情が、嘘のように凪いで穏やかになるのを感じていた。


ここに亜里沙がいる。


それだけで嬉しかった。


カーテン越しにベッドサイドの明かりが漏れている。

亜里沙はまだ起きているようだ。

何を考えているんだろう。

俺の子どもを…彼女は産んでくれるだろうか。

亜里沙に会ったら、まず最初に何を言おう。

俺の気持ち、子供の事、話すことは沢山ある。

不安や期待の入り混じった感情が、グルグルと頭の中で廻っていた。