地上のモグラと、底が抜けたコップ

菊にはじめに会ったのは、中学だった。特に気に留めなかったが、一個下の中では1番うまいそうだった。部内のランキング戦でも戦ったがセンスを感じた。でも、こんな想いを感じ始めたのは高校の時からだ。

「桜ちゃん、ちょっと待ってて」
一年生と、二年生では駐輪場の場所が違う、そのため校門の途中の銅像あたりで待ち合わせになる。いつも一緒に行こうと切り出すのは菊の方からだった。

「で、本当に福岡のラーメン美味しかった!あのラーメンだけで生活できる!」
菊はちょっと前の三連休で福岡旅行に行ってた。その時、旅行中なのに、写真が送られてきたのも嬉しかった。
「ガチかー、じゃーさー、あのーなんだっけイオンの近くにあるラーメン屋で、この前、先着無料にしてたところあそこうまいんだよね!俺好きだわ」
「あー山々亭ねー!確かにあの豚骨めちゃうまい!」
「そう!山々亭!またいきたいなー笑、、好きだよ、、、大好きあそこのラーメン」
我ながらキザだけど思いが漏れ出した時だった。
「そういえば俺人生8周してる気がする」
「どうしたの?笑なんで?笑、菊?」
「俺、恋みたいなのしたことないんだよねー笑、多分、彼女とか面倒ということがわかってるからじゃないかなー笑、男といる方がいいよ笑」
よくわからないけれどガチで物を考えるようなトーンで場を支配した。
「じゃー、恋人にするなら男ってこと?」
「そうなるねー笑」
嬉しかった。チャンスがまだこの迷路のどこかに眠ってることが明かされて

数か月後ー。
「ちょっと君ら来て」
女子部員たちに止められ部室に入る。
「なんで、どうしたの?」
「はい、これ、義理チョコ」 
「ありがとー、ってなんで菊も呼ばなかったの?菊も部室に来てんのに」
部室には部活の最高学年しか入れなかった、三年生は引退したので、今は二年生が使っていた。菊は部活後になると俺より早く用意を済ませ、部室に来ていた。 
「あれ、階段の下見てみ、」
そこには菊と、一年のバド部で入った稲葉さんがいた。
「今から告白すんのよー!」
「えっ、、あっ、そうか、応援しないとね」
心のうちを菊のことを考えたら理性で演技するほかなかった。

「ねー、菊、稲葉さんとなんかあったのか」
なんかあったことは知ってる、また演技した。
「ただ、チョコもらっただけだよ」
嘘だ、俺は真相を知っている。
「そういえば、次のコナンは見に行かない?」
「いいよ」
今年度分のコナンは、確かに俺が誘ったが、遅すぎて、友達と見たらしかった。菊はもう一度見るって言ったが、俺はうやむやにした。
その後は、勝手に2月の気温のように固まった会話が続いた気がした。
嘘かよ、あの時、恋しないって言ったくせに、人生8周目とか、、笑、冗談だったのは分かってた気がしたんだよ。