地上のモグラと、底が抜けたコップ


 少し冷たい風が自動とびらが開くたびに吹き通り、ぞっとした。僕は網膜色素変性症と去年の夏終わりに医師に告げられていた。入学前に一応病院に検診に来た。
 「平野さん、次どうぞ」
 「はい」
 「えーっと、最近物とかによくぶつかったりしませんか?」
 僕は一旦目を下に見て答えた
 「あります、机とか、椅子とか、たまに人にも」
 「そうですか、検査の結果ではね、前より網膜の血管が細くなっていて、今、夜見えにくかったり、視野が狭まってたりしてると思うんで、」
 「それってこのまま進行すると失明の可能性もあるってことですか」
 ゆっくり首を上げて落ち着いたトーンで聞いた
 「一概にも言えないけどね、網膜色素変性症は250人に1人が失明すると言われている難病で、可能性はないとは言い切れないですねーー

帰り道は春なのに寒かった。少し冷たい風が自転車を漕ぐと絶えられなくなる。
「ただいま」
「おかえり、あんたちょっと遅かったね、検査どうだった?」
僕は診断書を机に置いて充電器を持って2階に上がった。疲れた、布団に飛び込もう、毛布にくるまろう、将来僕はどうなるんだろうか。

数日後ー。
入学式が終わってなんとなく友達が出来始めた。
「よー!菊馬っ!お前サークルなに入るん?」
肩に腕を回し、トモヒロが言う
「あーん?どーしよっかなー?俺、目が悪いし、球技は無理かも笑」
「そうなん?お前、高校はバト部でエースだったらしいやん。」
「ちょっ、おまっ、それ誰から聞いた?」
「ねー!菊馬くん!ぜひ一緒にバドミントンサークルに入って天下目指しましょう!」
知らん顔のメガネがモグラ叩きのように出てきた。
「こいつだよ、こいつに聞いた、名前なんだっけー笑?」
「高橋です!高橋ひろとです!覚えてませんか?県大会初戦あなたにデュースまで行ったあの高橋です!ダメですかね?菊馬くん!?」
「誰だっけ(小声でぼそっと)あーわりぃー、俺、目悪くなったんだ笑」
「そうでしたかー、でもコーチとかどうですか?!あの県大会で公立高校ながらも私立の全国常連の高校と戦ってたベスト16決定戦は忘れられません!ぜひ、バドサーに!」
「あはははー、結局負けたしなー笑、コーチはなー」
小声で
「おい、逃げんぞっ、」
僕らはダッシュでカフェテリアまで逃げた
「あっ、ちょっと、まってくださーーーぁい!」