その日は、
友達に誘われて飲み会に参加していた。
男女混合で、
しかも大学の卒業生も来るような、
少し大きめの集まり。
正直、気が進まなかったけど、
「たまにはいいじゃん」の一言に押された。
席について少し経った頃、
スマホが震える。
蓮からだった。
「今日も会いに行くね」
いつもなら、
それだけで胸が落ち着くのに。
今日は、
少しだけ迷ってから返した。
「今日は飲み会なんだ」
既読がつくのが、
やけに早かった。
返事は、なかった。
(怒ってるかな)
そう思いながら、
グラスに口をつける。
その時。
「猫、好きなんですか?」
隣の席から、
穏やかな声が聞こえた。
振り向くと、
初めて見る男性が立っていた。
落ち着いた雰囲気で、
派手じゃないけど、
目元が優しい。
「バッグに、猫のキーホルダーついてたから」
そう言われて、
思わず笑ってしまう。
「はい。実家でも飼ってて」
そこから、
自然と会話が続いた。
猫の種類。
性格の違い。
夜中に突然走り回る話。
「わかります、それ」
そう言って笑う横顔が、
不思議と心地よかった。
「誠です。卒業生で、今日はたまたま顔出してて」
名前を聞いた瞬間、
胸の奥が、少しだけざわついた。
——この人、
大人だ。
ガツガツしてない。
距離の取り方が、ちょうどいい。
ふとスマホを見ると、
蓮からの返信は、まだ来ていなかった。
そのことに、
なぜかさっきよりも
心が静かになっている自分に気づく。
(なんでだろう)
グラスの氷が溶ける音が、
やけに大きく聞こえた。
この夜が、
少しずつ、
何かを変え始めていることを。
その時の私は、
まだちゃんと理解していなかった。
友達に誘われて飲み会に参加していた。
男女混合で、
しかも大学の卒業生も来るような、
少し大きめの集まり。
正直、気が進まなかったけど、
「たまにはいいじゃん」の一言に押された。
席について少し経った頃、
スマホが震える。
蓮からだった。
「今日も会いに行くね」
いつもなら、
それだけで胸が落ち着くのに。
今日は、
少しだけ迷ってから返した。
「今日は飲み会なんだ」
既読がつくのが、
やけに早かった。
返事は、なかった。
(怒ってるかな)
そう思いながら、
グラスに口をつける。
その時。
「猫、好きなんですか?」
隣の席から、
穏やかな声が聞こえた。
振り向くと、
初めて見る男性が立っていた。
落ち着いた雰囲気で、
派手じゃないけど、
目元が優しい。
「バッグに、猫のキーホルダーついてたから」
そう言われて、
思わず笑ってしまう。
「はい。実家でも飼ってて」
そこから、
自然と会話が続いた。
猫の種類。
性格の違い。
夜中に突然走り回る話。
「わかります、それ」
そう言って笑う横顔が、
不思議と心地よかった。
「誠です。卒業生で、今日はたまたま顔出してて」
名前を聞いた瞬間、
胸の奥が、少しだけざわついた。
——この人、
大人だ。
ガツガツしてない。
距離の取り方が、ちょうどいい。
ふとスマホを見ると、
蓮からの返信は、まだ来ていなかった。
そのことに、
なぜかさっきよりも
心が静かになっている自分に気づく。
(なんでだろう)
グラスの氷が溶ける音が、
やけに大きく聞こえた。
この夜が、
少しずつ、
何かを変え始めていることを。
その時の私は、
まだちゃんと理解していなかった。
