夜はまだ、元彼を思い出す

大学1年の冬。

キャンパスの空気にも慣れて、
結衣はそれなりに毎日を過ごしていた。

一方、蓮は。

「今日、講義だるくてさ」

そんな言葉が、
いつの間にか増えていた。

バイトも続かず、
夜型の生活。

昼間の連絡は減って、
代わりに夜になると、決まって会いに来る。

不思議と、
夜の蓮は魅力的だった。

強引で、独占欲が強くて、
「俺のだから」みたいな態度。

突然抱き上げられたり、
何も言わずに引き寄せられたり。

——高校の頃より、ずっと刺激的で。

(離れられない)

頭では、
「このままでいいのかな」って思うのに。

身体が、心が、
蓮を求めてしまう。

俺様で、王子様みたいで、
夜は、完璧だった。

でも、ふとした瞬間。

昼間のだらしなさ。
将来の話を避ける態度。

その全部が、
夜の甘さと噛み合わなくて。

(この人と、先はあるのかな)

そう思った瞬間、
結衣は自分が“沼に片足を突っ込んでいる”ことに気づく。

刺激と不安。
安心と違和感。