次に蓮と会う日は、
いつもより少し早く起きた。
鏡の前で、
髪を整えて、
服を何度も着替える。
——今日は、言われたい。
ただ、それだけ。
可愛いって。
一言でいいから。
待ち合わせ場所に現れた蓮は、
いつもと変わらない顔で、
「お、早いな」
それだけだった。
歩きながら、
私はわざと蓮の前に出て、
くるっと回る。
「今日、どう?」
冗談っぽく聞いたつもりなのに、
心臓はうるさい。
蓮は少し考えてから、
「……寒くね?」
ジャケットをかけてくれる。
優しい。
ちゃんと。
でも、
欲しい言葉は、そこじゃない。
カフェで向かい合っても、
話題はいつものこと。
バイト。
友達。
大学。
ふと、
誠の声がよぎる。
「今日の服、可愛いですね」
あの自然な一言。
——なんで、
あの人は言えるのに。
別れ際、
蓮は私を引き寄せて、
額にキスをした。
「また夜な」
その瞬間、
胸の奥が、
すっと冷える。
……やっぱり、夜なんだ。
家に帰って、
鏡を見る。
気合いを入れた私が、
そこにいる。
「……可愛くなかったのかな」
誰にも聞こえない声で、
呟いた。
スマホが震える。
「今日は遅くなる」
短いメッセージ。
私は画面を閉じて、
ベッドに倒れ込んだ。
好き。
でも、不安。
安心。
でも、寂しい。
この気持ちに、
まだ名前はつけられない。
ただ、
一つだけ分かるのは。
あの一言が、
私の中で何かを
静かに変え始めているってこと。
いつもより少し早く起きた。
鏡の前で、
髪を整えて、
服を何度も着替える。
——今日は、言われたい。
ただ、それだけ。
可愛いって。
一言でいいから。
待ち合わせ場所に現れた蓮は、
いつもと変わらない顔で、
「お、早いな」
それだけだった。
歩きながら、
私はわざと蓮の前に出て、
くるっと回る。
「今日、どう?」
冗談っぽく聞いたつもりなのに、
心臓はうるさい。
蓮は少し考えてから、
「……寒くね?」
ジャケットをかけてくれる。
優しい。
ちゃんと。
でも、
欲しい言葉は、そこじゃない。
カフェで向かい合っても、
話題はいつものこと。
バイト。
友達。
大学。
ふと、
誠の声がよぎる。
「今日の服、可愛いですね」
あの自然な一言。
——なんで、
あの人は言えるのに。
別れ際、
蓮は私を引き寄せて、
額にキスをした。
「また夜な」
その瞬間、
胸の奥が、
すっと冷える。
……やっぱり、夜なんだ。
家に帰って、
鏡を見る。
気合いを入れた私が、
そこにいる。
「……可愛くなかったのかな」
誰にも聞こえない声で、
呟いた。
スマホが震える。
「今日は遅くなる」
短いメッセージ。
私は画面を閉じて、
ベッドに倒れ込んだ。
好き。
でも、不安。
安心。
でも、寂しい。
この気持ちに、
まだ名前はつけられない。
ただ、
一つだけ分かるのは。
あの一言が、
私の中で何かを
静かに変え始めているってこと。
