蓮と別れたあと、
少し遠回りして帰ることにした。
頭の中が、
まだ整理できなくて。
駅前を歩いていると、
後ろから声がした。
「……あれ?」
振り向くと、
見覚えのある人が立っていた。
飲み会で会った、
社会人の先輩。
——誠。
「偶然だね」
そう言って笑う顔は、
相変わらず落ち着いていて、
大人っぽい。
「買い物?」
「うん、ちょっと」
短い会話なのに、
不思議と緊張しない。
私の服を見て、
誠が一瞬だけ目を細めた。
「今日の服、可愛いですね」
……え?
思わず、
言葉が出なくなる。
褒められたこと自体じゃない。
その言い方。
さらっとしていて、
下心がなくて、
でもちゃんと“私”を見てくれてる。
胸の奥が、
きゅっと鳴った。
「ありがとうございます」
そう答えながら、
顔が熱くなるのが分かる。
たった一言なのに、
さっきまでのモヤモヤが
少しだけ軽くなった。
「寒くない?」
そう聞かれて、
首をすくめると、
「じゃあ、これ」
近くの自販機で買った
温かいミルクティを
手渡してくれた。
「無理しないで」
それだけ。
特別なことは、
何もない。
でも——
“大丈夫だよ”って
言われた気がした。
別れ際、
「気をつけて帰ってね」
そう言われて、
私は何度も振り返ってしまった。
……どうしてだろう。
ただ褒められただけなのに。
ただ優しくされた、だけなのに。
「可愛い」
その言葉が、
こんなにも心に残るなんて。
家に着いて、
スマホを見る。
蓮との今日のデートの写真を見返す。
画面を見つめたまま、
私はミルクティの缶を
ぎゅっと握った。
——同じ一日なのに、
どうしてこんなに違うんだろう。
少し遠回りして帰ることにした。
頭の中が、
まだ整理できなくて。
駅前を歩いていると、
後ろから声がした。
「……あれ?」
振り向くと、
見覚えのある人が立っていた。
飲み会で会った、
社会人の先輩。
——誠。
「偶然だね」
そう言って笑う顔は、
相変わらず落ち着いていて、
大人っぽい。
「買い物?」
「うん、ちょっと」
短い会話なのに、
不思議と緊張しない。
私の服を見て、
誠が一瞬だけ目を細めた。
「今日の服、可愛いですね」
……え?
思わず、
言葉が出なくなる。
褒められたこと自体じゃない。
その言い方。
さらっとしていて、
下心がなくて、
でもちゃんと“私”を見てくれてる。
胸の奥が、
きゅっと鳴った。
「ありがとうございます」
そう答えながら、
顔が熱くなるのが分かる。
たった一言なのに、
さっきまでのモヤモヤが
少しだけ軽くなった。
「寒くない?」
そう聞かれて、
首をすくめると、
「じゃあ、これ」
近くの自販機で買った
温かいミルクティを
手渡してくれた。
「無理しないで」
それだけ。
特別なことは、
何もない。
でも——
“大丈夫だよ”って
言われた気がした。
別れ際、
「気をつけて帰ってね」
そう言われて、
私は何度も振り返ってしまった。
……どうしてだろう。
ただ褒められただけなのに。
ただ優しくされた、だけなのに。
「可愛い」
その言葉が、
こんなにも心に残るなんて。
家に着いて、
スマホを見る。
蓮との今日のデートの写真を見返す。
画面を見つめたまま、
私はミルクティの缶を
ぎゅっと握った。
——同じ一日なのに、
どうしてこんなに違うんだろう。
