夜はまだ、元彼を思い出す

その週の休日。

久しぶりに、
昼から蓮と会った。

「今日はどこ行く?」

そう聞かれて、
少しだけ安心した。

最近は、
夜に会うことが多かったから。

待ち合わせ場所に現れた蓮は、
相変わらずかっこよくて、
それだけで胸がきゅっとなる。

今日は、
可愛いって言われたくて。

いつもより時間をかけて、
服も、髪も、メイクも、
全部ちゃんと考えてきた。

「似合ってる?」

勇気を出して聞くと、
蓮は一瞬だけこっちを見て、

「まあ、いいんじゃね」

それだけ。

……それだけか。

デートは楽しかった。
歩いて、笑って、
手を繋いで。

でも、
頭のどこかでずっと思ってしまう。

——可愛いって、言わないな。

前は気にしなかった。
蓮はそういうタイプだって、
分かってたから。

でも今は、
その一言が欲しかった。

帰り際、
蓮は私をぎゅっと抱き寄せて、

「また夜、行くから」

そう言った。

嬉しいはずなのに、
胸が少しだけ沈む。

……昼じゃ、だめなの?

街中の鏡に映る自分を見る。

「私、可愛くないのかな」

小さく呟いてしまった。