夜はまだ、元彼を思い出す

結衣からの返信を見た瞬間、
胸の奥が小さく跳ねた。

「今日は飲み会なんだ」

……は?

スマホを握ったまま、
無意識に舌打ちする。

誰と?
どこで?
男はいるのか?

聞きたいのに、
聞かない。

「そっか。終わったら連絡しろよ」

短く送って、
ベッドにスマホを投げた。

結衣は俺の彼女だ。
それは変わらない。

なのに、
知らない場所で、
知らない男たちに囲まれてると思うと、
腹の奥がじわっと熱くなる。

俺はチャリの鍵を掴んだ。

夜風は冷たい。
ペダルを踏むたび、
余計な考えが頭に浮かぶ。

——迎えに行ったら、
重いって思われるか?

……違う。

俺は、
結衣に会いたいだけだ。

それに、
誰かに送られるくらいなら、
俺が迎えに行く。


信号待ちで、
スマホを確認する。

通知は、ない。

「……まだかよ」

小さく呟いて、
またペダルを踏む。

高校の頃は、
俺が会いに行けば、
結衣は当たり前みたいに笑ってくれた。

大学生になって、
大人の段階を踏もうとか、
余裕ぶったこと言ったのは俺だ。

でも——
他の男が近づくのは、
話が別だ。

俺の彼女だ。

飲み会?
男?
そんな場所に行くなら、
俺のとこ来いよ。

チャリを止めて、
空を見上げる。

……まだ、連絡はない。

結衣が誰と話してるのか、
誰に見られてるのか、
考えるだけでイラつく。

「帰ったら覚悟しとけよ」

誰もいない夜道で、
そう呟いた。