夜はまだ、元彼を思い出す

高校の三年間、
私はずっと 蓮 と一緒だった。

放課後になると自転車に乗って、
行き先も決めずに走る。
コンビニ、河川敷、知らない住宅街。
目的なんてなかったけど、
それが当たり前みたいに楽しかった。

「結衣、こっち」

そう言って振り返る蓮は、
いつも少しだけ照れた顔をしていた。

可愛い、なんて言葉は
一度も言われたことがない。
でも、その代わりみたいに
目を逸らして笑うところがずるかった。

大学生になって、
私たちは別々の場所へ進んだ。

私は毎日バイトをして、
将来のためにお金を貯めている。
疲れていても、
ちゃんと起きて、ちゃんと働いて、
ちゃんと前を向いていた。

蓮は、
大学をサボったり、
バイトが続かなかったり。

それが嫌で、
何度も言い合いになった。

それでも夜になると、
蓮は何事もなかったみたいに迎えに来る。

「なあ、出かけようぜ」

強引に手を引かれて、
夜の街を歩く。

その時間が、
嫌いになれなかった。

女の影なんてひとつもないのに、
イケメンで、自由で、
将来の話だけは、
いつも誤魔化す人。

嫌いになる理由は、
ちゃんと揃っているのに。

それでも私は、
レンの背中を見ていると
「このままでいいのかな」って
思ってしまう。

――この時はまだ、
未来で出会う 誠 のことを
知るはずもなかった。

柔らかい雰囲気でかわいい主人公
結衣
×
俺様気質で独占欲が強いイケメン元彼

×
優しくて大人な今の彼氏


結衣は最後にどちらを選ぶ?