泡沫少女は愛を知らなかった。

二人は、少しずつ時間を共有するようになる。

特別な約束はしない。

ただ、気づくと隣にいる時間が増えていった。

彼女は、自分が話す量が増えていることに気づく。

以前なら胸の奥に沈めていた考えを、言葉にしていた。

少年は、彼女の言葉を、注意深く聞いた。

理解しようとした。

理解できなくても、否定しなかった。

それが彼女には、不思議だった。

「わかってもらえなくてもいい」という前提で生きてきた彼女にとって、
「わかろうとされる」ことは、想定外の出来事だった。

一方、少年の中でも変化が起きていた。

彼女の感情の揺れが、彼の中に入り込んでくる。

彼女が黙り込むと、理由を考えてしまう。

彼女が笑うと、なぜか安心する。

それは、これまで誰にも向かなかった感情の矢印が、初めて明確な対象を得た瞬間だった。