泡沫少女は愛を知らなかった。

二人が一緒に暮らし始めたのは、流れのようなものだった。

大きな決断をした感覚はなかった。
どちらから言い出したのかも、曖昧だった。

「一緒にいたほうが、自然だと思った」

それだけだった。

部屋は狭く、日当たりもよくなかったが、彼女はそれを不満に思わなかった。

少年がいる場所なら、どこでも同じだと思えた。

最初のうちは、すべてが新鮮だった。

同じ時間に眠り、同じ空間で目を覚まし、他人だったはずの生活の音が、すぐそばにある。

歯ブラシが二本並び、洗濯物の量が増え、冷蔵庫の中身が共有される。

――これが、誰かと生きるということ。

彼女は静かに噛みしめていた。

少年も、満たされていると感じていた。

誰かが帰りを待っている。

部屋に明かりが灯っている。

それだけで、自分が世界から切り離されていないと思えた。

だが、欠けている二人はまだ知らなかった。

距離が近づくほど、隠してきた空洞は、よりはっきりと形を持つということを。