泡沫少女は愛を知らなかった。

二人は、まだそれを「愛」とは呼ばなかった。

むしろ、呼べなかった。

彼女は、自分の感情を疑っていた。

これは錯覚ではないか。

ただの慣れではないか。


少年も、自分を信用していなかった。

一時的な依存ではないか。

この温度は、すぐに消えるのではないか。

だが、疑いながらも、二人は引き寄せられていった。

会えない日が続くと、彼女は落ち着かなくなった。

理由のわからない不安が、胸に溜まる。

少年は、彼女の不在を、身体的な痛みとして感じ始めていた。

食事が味気なくなり、時間の流れが遅くなる。

――これは、何だ。

答えは出ない。

けれど、無視できるほど小さくもなかった。