チリリリリ
激しく揺れる目覚まし時計に起こされ、布団を出る。
ベッドのそばに飾ってある写真におはよう、と告げキッチンに立つ。
トースターにパンを入れ、お湯を沸かしてミルクティーの粉を溶かす
こんがり焼き上がったパンを頬張りながら洗濯だけ回そう、と思う。
食器を洗って、顔を洗って、制服に着替える。
なんの変哲もない、校則通りの着こなし。
いってきます、と声にならない声を誰もいない部屋に落とす
ドアを開けると眩しすぎる光が入ってきた
「さつきー!おはよう!」
学校の最寄り駅から学校への道を歩いていると後ろから大きな声が聞こえてくる
私の背中をバシッと叩いて右隣をあるき出したのは親友の茜
ぱっちりとした目に、くるっと巻いた茶色の髪、膝上まで上げたスカートは女の子の魅力を詰め込んだ存在でみんなの注目の的だ
私とは何もかも正反対な茜だけど入学式の日、茜から話しかけてくれて、意気投合した
おはようと口を動かしながら笑いかける
他愛もない話をしていると
「やっほー、あかねー、さつきちゃーん」
「うるさいのきたーー」
後ろの方から全速力で走ってくるのが池田大地
その少し後ろを迷惑そうな顔をして歩いているのが佐藤颯真。
2人とも同じクラスの友達で、私達4人は入学したときからいつも一緒にいる。
「咲月ちゃん、おはよう!」
携帯に文字を打ち込んで、2人の方に向ける
(おはよう、大地くん、颯真も)
「ん、おはよ」
颯真は寡黙でちょっとぶっきらぼうだけど、根は優しい。
大地くんはいつもうるさくて、とっても明るい。
そんな対照的な2人。
大地くんと茜は同じ小学校だったらしく、高校で会った時びっくりしていた。
颯真は同じ中学から唯一、一緒の高校に進んだ人。
同じ部活だったから仲良くしていて、高校に入ってからは自然と一緒にいるようになった。
教室につくとそれぞれの席に荷物を置く。
すぐにノートを広げ、そばにペンもおいておく
私の声が出なくなったのは、去年の秋、中学3年生のときのこと
病気とかじゃなくて、心の問題らしくて、いつ治るのかはわからない
友達とはノートに書いたり、音声アプリを使ったりしてコミュニケーションをとる
面倒くさいだろうに、いつも嫌な顔せず話してくれる3人には本当に感謝している
「またなんか変なこと考えてるだろ」
突然話しかけてきた颯真にびっくりする、なんで?と思うと
「申し訳ないなーってのが顔に出てんの。笑」
付き合いが長いだけあり、颯真とは何もなくても口パクや表情だけで会話ができる。
「ねー!すぐ2人の世界に入る!!」
「うるさいよ大地!」
大地くんと茜のテンポの良い会話は聞いていて楽しい。
思わず笑ってしまうと大地くんが笑わないでー!とプリプリしていた
少し話していると先生が入ってきた、
「はーい、着席。日直挨拶ー」
数学の授業は少し退屈
おじいちゃん先生がひたすら話しているだけだし、中学生のときに勉強した内容の問題はすぐに解き終わってしまう。
空を見ていても、グラウンドを見ていてもなかなか終わらないから、私はよく茜たちの様子を見ている。
茜はたいてい寝ているけど、面白いのは颯真と大地くん。
あんまり勉強が得意じゃない大地くんは、授業中ずーっと颯真に話しかけている
カッコ1はどう解くの、じゃあ2は? え、これ宿題なんて言ってた?
話し声が聞こえるわけじゃないけど、プリントを持って必死の形相で話しているのを見るとそんなところだと思う。
あの3人といるといつだって笑いが耐えない
この学校に入って良かったとおもえる瞬間
終礼が終わって帰る準備をしていると、茜が席にやってきた。
“今日部活ないの?”
いつも終礼中にはユニフォームに着替えて、ばいばーい!って言いながら教室をでていくから、話しかけられるのが珍しくてびっくり
「今日オフなの!だからさ、どっかよってかえろー?」
”良いね”
と話していると大地くんが大声で「俺らもオフ!!」って叫んで、颯真に教科書で頭を叩かれている。
今日はみんなで一緒に帰れるんだ、と思わず頬が緩んだ
颯真と茜は学校の寮に住んでいて、寮は学校から15分くらい歩いたところにある最寄り駅近くにある。
大地くんも私もその駅を使っているから時間の合う日は一緒に帰れるんだけど、部活動に入っていない私とは違って運動部の3人は毎日部活で忙しいから一緒に帰れるのは珍しい。
「今日、清掃だぞ」
今日はその寮の月に1度の一斉清掃日だったらしい
「うわ、そうだ最悪」
茜が掃除したくないって駄々こねるのをなだめながら、出かけるのはまたの機会にねって話していると、すぐに寮の近くについてしまった
「じゃあね!また明日」
バイバイ、と手を振り駅へ向かおうとすると
「咲月、気をつけて帰れよ」
(分かってる)
茜を追いかける颯真の後ろ姿を見つめながら大地くんと駅へ歩き出す。
「咲月ちゃんはそのまま帰るの?」
(うん、夕飯の買い物だけして帰ろうかなって)
「そっか、うちは今日カレーだって」
大地くんは実家暮らしで、私は一人暮らし。
お母さんが仕送りをしてくれているけれど、晩御飯は自分で作ることが多いからこうして駅で2人になると大地くんはいつも夕飯のメニューを一緒に考えてくれる
(私もカレーにしようかな)
「明日の昼は2人揃ってカレーだね」
(茜にまた臭いって文句いわれちゃう)
なんて他愛のない話をしながら、改札を通る。
大地くんの家と私の家は学校をはさんで真反対にあるからここでお別れだ
「じゃあね、また明日」
(うん、バイバイ)
一人になって、電車に乗り込む。
家の最寄り駅までは20分くらいなんだけど、その2つ前の駅で電車を降りる。
いつもの商店街を通って、少しそれたところにある脇道を歩くと突き当りに海が見える丘がある。
見下ろせる海は、夏は海水浴客で賑わうような有名な海水浴場だけど、この丘だけはいつも人がいない私だけの特等席。
2人がけの小さなベンチが1つと、いつ作られたのか分からない錆びた小さなテーブルだけがある場所。
3方を木で囲われているから私がここにいても誰にも気づかれない。
街の喧騒も、人の話し声も全く聞こえない。
波の音だけが聞こえる。
学校帰りにいつもこの場所であの人のことを思い出す。
私がここにいることは誰にも言っていないけど、颯真はきっと私が海に行くことをわかった上で、気をつけろよっていってくれている。
この海にいるのは、私が大好きだった人。
・・ううん、今も大好きな人。
ある日突然私の前から消えた、大好きな人。
家に帰るとすぐに、ローファーについた砂を払う。
意外と敏感な2人に気づかれないようにするため。
海に行っていることを隠している理由はない。
ただ、自分からは話せないだけ。
海に行っていることを話せば、私のカコをはなすことになる。
それは、出来なかった。
私が悪いんだ。
楽しみにしているね、なんて言ったから
プルルル
颯真からだ
私は声が出ないのに、音だけで電話してくるのもいつものこと
「おつかれ、何してんの」
(今帰ったところ。どうしたの?)
「いや、特に何も」
(こわ、)
「そういえばさ、勉強会なんかいるものあるか?」
(あー・・)
「忘れてただろ、笑」
(わー、すれてはない!)
遡ること3日前、それは大地くんのささいな一言で決まった
「咲月ちゃーん、テスト勉強どんな感じ??」
突然机の前にやってきた大地くんにびっくりしながら、ノートに文字を書く
”いつも通りだけど、どうしたの?”
「英語、教えてくんない?」
そういって頭の前で手を合わせる大地くん
どうしようかなと困っていると颯真がやってきて
「自分でやれよ、テスト前なんだし」
「もう難しすぎるの!一人じゃ分かんないってば〜、颯真厳しいし」
「ねね、じゃあさ4人で勉強会しようよ!」
”それ茜も教えてほしいんでしょ?笑”
「ばれたか」
てへへと笑ってごまかす茜と頼み込んでくる大地くん。
”良いよ、一緒にやろう”
「ありがと!!咲月ちゃんだいすき!!」
「咲月、照れてる?笑」
”照れてないよ!”
いつも調子の良いこという大地くんだけど、こんなことを言われるとほんの少し照れくさい。
そんな私をみて、にやにやしている茜をちょっとだけ睨む
「こわいこわい!笑」
”せっかくだし、颯真もさ?”
「いいけど」
「ほんっとに咲月に甘いね!?颯真」
茜がいつも通りからかって、めんどくさそうな顔の颯真
颯真は何を考えているのか、今も昔もよく分からないけどいいタイミングでほしい言葉をかけてくれる。
一緒にいる時間が長くなってからは、とくにそう思う瞬間が増えた。
今だって、そうだ。
(お昼軽く作ろうかなって思ったけど、飲み物とか?お茶くらいしかない)
「分かった、飲み物買っていく」
(ありがとう)
「じゃあな、こんな時間にごめん」
(ううん。おやすみ)
「おやすみ」
何作ろうかなとか考えてたら、結構遅い時間になっていてあわてて布団に入った。
色々と相談した結果、勉強会は私の家ですることになった。
颯真が家を知っているから、茜と大地くんを連れてきてくれる。
いつもよりちょっと掃除を頑張って、お母さんに教えてもらった軽食を作った。
そうこうしていると颯真から連絡があって、最寄り駅に着いたらしい。
慌てて着替えをして3人を待つ
ピーンポーン
エントランスのインターホンがなった。
颯真は鍵を持っているはずだから念のため押してくれたのかな。
許可を押して扉をあける。5分くらいすると次は部屋の方が。
ピーンポーン
「咲月おはよー、めっちゃきれいなマンションだね!」
(ありがとう、どうぞ入って)
茜が入るとその後ろに大地くん。
そのまた後ろに颯真が大きな荷物をもっている
それ、何?と目で訴えると
「母さんから大量に梨とか果物が来てさ。こんなに食べれないから差し入れ。場所代」
(ありがと、なんでエントランスの鍵使わなかったの)
「合鍵持ってるってなったら話ややこしくなるだろ」
(まー、そっか。そうだね)
「大地の前で合鍵とか言うなよ」
どうして?と首をかしげると
「なんでもだよ」
「ねー、2人共なんで玄関いるの?早く入りなよ」
茜が部屋の主みたいなことを言うから、2人で笑いながら部屋に入る
「包丁借りるな」
どうぞとキッチンを指差すと袋を持って歩いていった
いつも通りわちゃわちゃ話もしながら、ときには一人で真剣に。
「ねね、咲月ちゃんTom is talking with a smile on his face って彼は笑顔を持ってるの?」
そう質問した大地くんをみて思わず颯真の口が空いているのが視界に入る。
“ううん、このwithはね状況を表すやつ”
「ほぉ、」
”だから、「笑いながら話した」になるよ”
「あー!なるほど!」
「颯真、口、あいてる」
「ごめんごめん、思わず」
「ひーどーい!!」
13時くらいになると大地くんがお腹すいたから集中できないって言い始めたから、ご飯の時間にする
口々に喜んでくれる3人を見ていると、作ってよかったーって嬉しくなった
「そういえばさ、俺らこんど夏の地区大会出れることになったんだ」
大地くんと颯真は高校のサッカー部に所属している
大地くんがそう言い出すと、視界の端で颯真が少し焦った顔をした。
「すごいじゃん」
「すごいだろ?」
「うるさいわ」
「理不尽!!咲月ちゃん、颯馬からなんか聞いてる?」
(ううん、聞いてない)
「レギュラー取ったからさ、見に来てほしいのー」
(・・いつ?)
「えっとねー、7月23日!テスト終わってすぐなんだよー」
(あー)
「秋は茜の大会と被ってるし、冬は出れるかわかんないからさ」
「あんたら出れないとかないでしょ」
颯馬と大地くんは1年生ながら現エースといってもいいくらい強くて、入学早々から先輩に混じって大会にも出ている
「まぁまぁ、そうだけど!」
「謙遜って言葉知ってる?笑」
「おまえ、23から実家帰るんだろ?」
え、あ・・(そうなの、ごめんね。また、絶対行くから)
「わー、残念!頑張って秋も出る!」
「咲月の分も私が応援してくるからね」
(パワー送っとく)
颯真が勉強を始めたから、この会話は終わってもう少しみんなで勉強をした
どこでもいつも通りの雰囲気が楽しくて、一人でする勉強よりも捗った気がする
明日も早いし、と夕方には解散して先に2人が帰っていった。
颯真は片付けを手伝うと残ってくれた。
手伝いなんて言っていたけど実際はほとんど全部やってくれて
食器を洗っている後ろ姿をぼーっと見つめる
「ごめん」
急にそんなことを言い出すから慌てて携帯を手に取る
(何が?)
「大地に予定あるって言うの忘れてた」
(あー、私が言えばいいことだし、全然)
「・・咲月のせいじゃないからな。それは・・違うから」
曖昧に頷いて携帯を置く
「次、病院いつだっけ?」
”来週の水曜日”
「着いてくから」
”テスト中だけど”
「そういうの良いから」
ちょっと怒った声でそんなことをいうけど、いつも心配してくれているのはよく分かっているつもり
”ありがとう”
颯真の愛情は分かりにくいところがあるけれど、素直に向き合っていればたくさんのところに感じられる
「帰るな。なんかったら電話して」
(うん、ばいばい)
ピコン
画面を開くと懐かしい人の名前が浮かぶ
"久しぶり"
"久しぶり、どうしたの"
"母さんが咲月は元気にしてるのかってうるさい"
"そっか。笑 大丈夫、元気にしてるよ"
"なら良かった"
"隼人は?"
"俺は変わらず、毎日部活三昧だよ”
"元気そうだね。夏休み、帰るから"
"ん、そっか。気をつけて"
"ありがと"
"おやすみ"
"おやすみ"
大地くんと茜がうなりながら頑張っているテスト期間
毎日、みんなで遅くまで学校で勉強をしているんだけど
「あれ、今日は帰るの?」
(うん、病院があるんだ)
「そっか、じゃあ大地と頑張るわ。笑」
「え!帰るの??」
「うるせえよ、じゃあまた明日な」
「え!颯真も?!」
(またね)
あんまり時間がないから騒ぐ大地くんを放おっておいて外にでる
「明日またうるさそうだな」
だね、
一言だけ言葉を交わすとあとは無言の時間が続く。
4人でずっといるからこそ、2人でいる時間を久しぶりに感じた。
特に何を話すわけでもないけれどなんとなく居心地が良い。
病院につくといつも通り待合室の端っこに立って
「待ってるから」
と言ってくれる。
診察室のドアを開けいつもの先生の前に座る
「調子、どうかな」
”全然変わってないです”
「そっか、」
30分くらい話して、いつもと同じようなことを言われて
もしもの時ようの薬をもらって、病院をでる
「どうだった」
(いつも通り。何も変わってない)
「そうか・・じゃあな、気をつけろよ」
(ありがと、また明日)
駅に向かった颯真と反対方向に歩き出す。
丘にいくと、いつも通りの風景が私を迎えてくれる
そろそろ熱くなってきたねー、
暑すぎたら来れないよ、さみしい?
・・・さみしくないか
いくら心の中でつぶやいてみても答えは返ってこない。
無事に(なんとか大地くんと茜が補修を回避した)テストも終わり、今日は1学期最後の日。
高校生として初めての迎える夏休みに浮かれ気分なクラスの雰囲気が楽しくて私も思わず笑顔になる。
終業式の前に、担任の先生から連絡があった
「明日から夏休みだけど、夏休みが明けたらすぐ文化祭の準備が本格化するんだ
うちの高校の文化祭来たことあるやつも多いと思うけど、11月に結構大規模にやるから各クラスから男女1人づつ実行委員を出す。
夏休み中に何回か集まりあるんだけど、やりたいやついるかー?」
うちの高校は熱心に部活に取り組んでいる生徒が多いから、夏休み中に集まりがあるとなるとやりたい人は少ない
そうなると自然と・・
「じゃあ、仕方ないからくじ引きだなー、いいか?赤のテープがついてたら委員だ」
話が長引きそうと判断した先生はとっととくじ引きに決めてしまう
男女それぞれでくじを引いて、、
あ、
自分の割り箸を見てぱっと顔を上げると、茜がこっちを向いてにやっとしていた
・・私の割り箸には赤いテープが。
さいっあくだ、
「じゃあ、女子は如月と男子はー、紺野か、頼んだぞ」
ん?紺野?
「わー、咲月ちゃんじゃん、やったねー」
まさかのもう一人は大地くんで一安心、
どうなることかと思ったけどこれならなんとかなりそうだ
HRが終わり、茜に同情されながら体育館に行く
(ね、うちの学園祭ってどんな感じ?)
「え!咲月来たことないの?」
(ここ受けるって決めたの中3の秋になってからだから)
「そうだ、エリートなんだった」
(ちがうよ、)
「最初に聞いたときはびっくりしたけど、咲月の賢さを見てたらびっくりしない」
(そんなことないって)
「大地、もうちょっと咲月を見習え」
「颯真がひどいこといってくる!自己肯定感大事!」
「あ、文化祭ね、なんかもうとにかくスケールが大きい文化祭!って感じ」
(そうなんだ)
「飲食系もゲーム系も模擬店あるしステージでバンドとかもしてる」
「準備大変だろうな」
長ったらしい校長先生のお話を聞き、高校生になっても同じような夏休みの過ごし方も聞いて、1学期終了だ。
いつものように話しながら、駅に向かう。
「話長すぎるんだよあの校長〜、って!なんで無視すんの!」
大地くんがぶーぶー文句を言っているが、3人共スルーするからすねている
「もうそれよりさ、夏何したい?自由な夏休みー!!」
「俺の話無視かよ!まぁいいけどさ、俺も自由な夏休み久しぶりだわ〜!あ、でも颯真と咲月ちゃんはそうでもないか」
「まー、そうだな」
なんて颯真がいうから小さくうなずく
受験のために必死に勉強して、って感じではなかったから海にも夏祭りにも行った記憶がある
・・サッカー部のみんなと
「2人ともずっと賢いんだなー、去年も遊んでた?」
(すごく遊んだとかはないけど、時々)
「周りもそんな感じだったしな」
「颯真と咲月ちゃんはふたば中学だっけ、サッカー強いとこじゃん」
中学の頃の話題に触れるのははじめてじゃないけど
「まぁな、てか夏どうするんだよ」
うまく颯真が話題をそらしてくれてほっとする
「やっぱりさ、夏といえば!ってことしたくない?海も行きたいし〜、夏祭り!BBQもしたいね〜」
茜がやりたいことをいっぱい上げているのを聞いてため息をつく颯真をみて笑ってしまう
「話変わるけどさ、咲月は実家帰るんだよね?」
(うん、1ヶ月位あっちにいる予定だよ)
「そっかー」
茜は地元が県外だから、部活もあるしお盆だけ帰るとこの間言っていた。
(ねぇ颯真、家帰るの?)
「お盆だけ帰る、他は部活だし。全中決まったらしくて部活に顔出せって言われてるから行くけど・・行くか?」
(そっか・・ううん、大丈夫)
「ん、ごめん」
「また地元トークするなよー!」
「うっせなー」
気まずい雰囲気を察するとすぐに浄化させる大地くんの明るさは本当に才能だなって思う
こんなこというとまた元気になっちゃうのでいわないけど。
寮の前について、2人と分かれる
「じゃあね、また連絡する!」
(わかった、またね)
「気をつけろよ」
いつもと違うのはまた明日ね、じゃないところだけ。
大地くんと2人になるのもいつも通りだ
すると
「ね、実行委員頑張ろうね。咲月ちゃんと一緒なら頑張れる〜!ちょっとめんどくさいけど」
くしゃっと笑いながら間近でそんなことを言われたので思わず顔が赤くなった
(よろしくね)
心臓の音がばくばくとうるさい
「じゃあ、またね!夏休み楽しもーぜ!」
(うん、またね)
電車に揺られながら、すっかり見慣れた景色を見る
まだこの街に来て3ヶ月くらいなのにすっかり心地よくなったのは海斗がそばにいてくれるからかな
しばらくここを離れるから海にはすぐにいけなくなる。
海がそばにないと、海斗がそばにいてくれない感じがしちゃうのは依存しすぎだよね。
いつもどおりの場所に行って、海斗に帰るねと話しかける。
その言葉は絶対に帰って来ないけれど



