こじんまりとした顔には、切れ長の二重の目と、通った鼻に薄情そうな薄い唇。
美希の言う「整った顔」――というよりは、クールで素っ気ない面立ちというほうがしっくりくる。
恋人もかれこれ三年ぼどおらず、仕事に明け暮れる毎日を送っている。
……まぁ、ちょっとした過去の経験から、恋愛が怖くなっているというのも原因である。
ランチしていたカフェから中央区のビジネス街までは徒歩数分。大通り沿いに太陽の光を反射して煌めく、地上五十八階建ての自社ビルが、私の勤務地――タケモトホールディングだ。
化粧室で軽くメイクを直し、入社六年になる十四階・PR戦略部のドアを潜る。
◇◇◇
「お、やっと戻ってきたか……」
待ちくたびれたような声が、人のまだ少ないフロアの日当たりのいい私のデスクから上がった。
もちろん座っているのは私ではない。
「新、あれ? 出張行ってたんじゃないの?」



