「神山」
そして、恐る恐る、彼は口にする。
「返事はゆっくりでいいから……今夜は、俺に付き合ってくれないか? ここの夜景、すげえ綺麗なんだ――」
まずは前みたいに、一緒にいる時間を増やしながら、私の歩調に合わせて考える時間をくれようとしているのだろう。
新のそういう優しいところ、とても好きだ。
私は、一瞬迷ってから、そっと手を重ねる。
「いいよ。ちゃんとあとで、一緒に美希に謝ってくれるならね?」
ぱっと表情を明るくした新が、私の手を引く。
「いくらでも、謝ってやる」
並んで歩き出した先のラウンジは、美しい夜景が堪能できるよう、照明の光度は抑えられ、落ち着いたダウンライトの光に包まれていた。
テンポよく言い合いながら、肩を並べて進む。
――来年は、きっと。ふたりで特別な夜を過ごしている気がした。
――――おわり



