「お相手も私の上司でイケメンだし、なにとぞ! 少しパーティーを楽しんで、ラストに相手役と並んで笑って立っていればいいから!」
口籠った途端、ここぞとばかりにパシン! と両手を合わせ、ぐぐっと詰め寄る親友。
さすが、私の“断れない性分”をよくわかっていらっしゃる。扱い方を心得ているな……?
ふわふわの綿あめみたいなボブヘア。スラリとしたモデルのような体型と美脚。おまけに顔なんて、大きな目がチワワみたいに潤んでいる。
ちょっとだけあざとさを感じつつも、共に地方から上京して仕事に励んできた親友の晴れ舞台。
――はぁ……仕方ない。
「わかった……出てあげる」
私は時計を確認しながら、了承して立ち上がる。
「え?! 本当に?!」
「もう昼休み終わりだし。美希の言うとおり彼氏いないし、若くないし、その日空いてるし。仕方ないから行ってあげる」
若干嫌味を交えつつ、スーツのシワを伸ばし、隣に置いてあった黒革のバッグを肩にかけた。
まるでクリスマス前の奇跡でも起きたかのように、美希はたちまち目を輝かせる。



