「説明はあとだ。今はここを出るぞ。婚活なんて、俺が許さない」
有無を言わせぬ声に、心臓が跳ねる。
次の瞬間、視界が大きく揺れた。
「きゃあ!」
しゃがみこんだ新に足元を掬い上げられ、気づけば腕の中。
いわゆる――お姫様抱っこ!
会場内から注目を浴び、頬が一気に熱くなる。
「ちょっ、おろしてよ! なんなの、いきなり! だいたい仕事なのになんでここにいるのよ! それも関係者しか入れないのに――」
抗議の声を気にせず、新は動き出した。もちろん注目を浴びていることも気にしていない。
「お前が勘違いして電話を切っただけで、今日ははじめからこの時間に帰宅予定だったんだ。ここには、お前の友達らしき女性に入れてもらったんだよ」
新は淡々と私の疑問に答えながら、出入り口に進んでいく。



