何を言い忘れたのかと聞こうとした私の声を遮ったのは、美希とは似つかない……お腹に響くような、少し甘みがかった低い声だった。
――な、何で……新っ!?
距離が出来てからは、内線以外で電話なんてすることはなかった。
久しぶりの声に、思わず胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
「急に、どうしたの……?」
彼は確か、私に土産を押し付けたあと、また地方出張に向かい、今夜は地方に宿泊しているはずだ。
私の声は少し震えていた。
新の低く落ち着いた声も、普段よりも少しだけ緊張を含んでいるように聞こえた。
【いきなり悪い。出先でちょっとトラブルがあって、神山に相談したくて】
思いがけず真面目な口調で、彼は説明する。
内容は些細なことだったが、電話越しでも伝わる真剣さに、私はしっかり耳を傾けた。
私たちPR戦略部の仕事は、イベントを通して企業や商品の魅力を伝え、ブランド力や購買意欲を高めることだ。



