「もう、彼氏と何かあったのかと思ったじゃん! 心配して損した」
「損なんて言わないでよー! 慎吾とおんなじくらい大切なことなんだから! 今回、私が初めて主導するイベントなのよ! しかもクリスマスで参加者も多いの!」
「はいはいー」
「ほんとに困ってんだよ〜?」
高校からの親友である美希は、大手イベント会社・向坂インターナショナルへ就職し、企業や地域活性化などからの依頼で多くのパーティーやイベントの主催を担当している。それも今回は初めて主導を任されたらしく、いつもに増して気合が入っていたことは、先日の差し飲みで聞いていた。
嘆きながらも、しっかり結婚間近の彼との惚気を口にする美希を視界の端に、テーブルに置いてあったチラシを手に取る。
日付は四日後に迫る、週末のクリスマスイブ。
店内のスピーカーからは、ちょうどクリスマスソングが小さく流れている。



