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――入社したの頃の私は、新と一緒に過ごすのが楽しくて、まるで性別を超えた親友のようだったと思う。
新と初めて話したのは、この会社の面接へ向かう途中だった。
「すみません、ちょっと道を尋ねたいんですが……?」
バス停を降りたばかりの私に、困ったように尋ねてきたのが新だった。
地方から出てきたばかりらしく、まだ垢ぬけていない。けれど、誠実そうな眼差しと整った顔立ちは、その頃から十分に印象的で、ドキドキした。
長身でクールかつ落ち着いた雰囲気の私は、いつも年上にみられることが多い。彼も私のことを自分より年上の社会人か何かだと思ったのだろう。
新の目的地を聞き、同じ会場へ向かうことを伝えると、とても驚いていた。
『すごく綺麗で見惚れたから、この人に聞いてみようと思ったんだ――』
照れくさそうにそう言われて、驚いたけれど嬉しかった。新は昔から、さりげなく人を喜ばせるのが上手い。



