冬の寒さが増してきた十二月下旬に差し掛かろうとしていたとき。
はじまりは、親友からの思ってもみない依頼からだった。
「はぁ? 婚活パーティーのさくら……?」
最近できた西洋インテリアの揃うオシャレなカフェは、クリスマスの飾りつけが始まったばかりで、赤と金のオーナメントが差す光に揺れていた。そんな華やいだ空気の中で、私――神山みすずは、信じられない依頼を受けた。
「そう! 頼んでた後輩が来られなくなっちゃって……あんたちょうど彼氏もいないし、顔も整っているし、若くもないし、一流企業勤めだし、ちょうどいいのよ!」
昼休みに私を呼び出した親友・大川美希は、食べ終えたランチセットを前に、ド失礼なことを連呼しながら頭を下げた。
十五分前の「たすけてー」のしおらしい電話が、こんな理由だったなんて……私の心中は呆れでいっぱいだ。



