クリームソーダ漂流記



 期待を裏切られた挙句にイタイ出費を強いられた。(美味しかったけど)

 まあ本命の「レトロ・クリームソーダ」ではなかったので、仕切り直しのつもりでリベンジをしようじゃないか。

 然れども、もうこれ以上の失敗はできないという痛切な思いで尋ねた2番目のお店は、この地域でもかなりの歴史がある老舗。店の外観からして古き良き喫茶店の佇まいが期待感をアップさせる。

 入り口には数々のメニューが紹介されており、どうやら入店時にカウンターで注文してお金を先に払うシステムらしい。……お!クリームソーダあるじゃーん!
 
 と、いうわけで入店&注文。
 しばしの間テーブルにて到着を待つ。


「お待たせしました。クリームソーダです」




 見よ。
 このエメラルドを彷彿とさせる濃い翠色の輝きを。
そしてクラッシュドアイスの上にはドーム状のバニラアイス。
 さらにその頂には深紅のルビーを思わせる缶詰チェリーがホイップクリームを玉座として燦然と輝き鎮座している。

「クリームソーダ」としてのその威容、揺るぎなし。その三者が揃った姿の、なんと美しきことか。






 ……なんだけども。












 ……なんでナナメやねん。

 ちがう。
 そうじゃない。
 そうじゃないんだ……


 私が求めているのはあくまでもレトロ感溢れ、ノスタルジーを感じさせるもの。
 こんなグラスはお目にかかったことはないぞ?それ以外はカンペキなのに!

「もうこれでいいじゃないか」

 そう思おうとしても、我が脳内では鈴木雅之氏が熱唱している。
しかもノリノリで、チガウチガウ!と叫んでいるのだ。
いい加減歌い終わって欲しいが、彼はノリノリだ。



 何故だ。
 レトロなノーマルクリームソーダはもう存在しないのか?
 作られた「映え」などいらんのだよ!