クリームソーダ漂流記





「お店でクリームソーダを飲んでみよう!」


 そう決心したものの、どこのお店にもあるとは限らない。
 私の持つ時間とお金は残念ながら有限だ。しかも悲しいかな、そんなに余裕もありはしない。昨今の物価高はきっと「クリームソーダ界隈」も直撃してるハズ。無駄は極力省きたいと思うのは当然だろう。


 こーいう時は頼みます、ぐーぐる先生っ!


 近隣の喫茶店を検索・検索・検索・検索……ヒットしねえなオイ。
 え?クリームソーダってしばらく見ないうちにマイナーな飲み物になったん?


 子どもの頃にレストランに行けば、食後に頼む飲み物の定番だったクリームソーダ。外食なんてそうそう頻繁に出来ず、ましてや食後に別注文でのデザートなんか祖父母と一緒に出かけた時しかチャンスはなく、そのような記憶の中でサンゼンと輝きを放つのがクリームソーダ。子どもながら健気にもメインのハンバーグを注文した後もメニューをじっと見る《《フリ》》をして、それとなくアピールし、「何か飲むかい?」の天の一言を待っていたあの頃。コーラフロートの存在に心揺れながらも、結局はあの翡翠色の輝きに魅かれてしまっていたあの頃。



 どこにでもあったはずなんだけど……?
 お、ここにあった。なんだ近くじゃん。昼休みに行ってこよう!


 で、目的のお店に着いたはいいんだけど、ここカフェだね。ちょっと行き慣れない雰囲気に気圧されるが、看板には「煙クリームソーダ」とある。……ちょい待ち。いつからクリームソーダは煙を吐き出すようになったんだ?? しかも850円て。


 ええい、ここで迷ってる暇はない!
 勇気を出して頼もーう!いざ入店っ!


「いらっしゃいませー♪ご注文お伺いします♪」

「あ、この『煙クリームソーダ』を……」

「申し訳ございません、本日はご準備できなくて」





がーん。





「あ、じゃあこっちのランチメニューを…」
「かしこまりましたー♪」

……違う。違うんですよ。
これは私が望んだ展開ではないんだ。
お昼はすでにコンビニおにぎりを用意してたんだ。



お店の人よ。
ちょっと言わせてもらいたい。

準備できないなら看板に出すなぁぁぁぁぁぁ!
せめて「SOLD OUT」くらい貼ってくれぇぇ!