桜色のあなたが教えてくれた物語

「先生、私を変えてくれた」
桜が儚く美しき咲く、春の門出の日。
三年間お世話になった制服と教室に別れを告げ、手元には受け取ったばかりの卒業証書と大切な人からの手紙。
ブレーザーのポケットの中に、花弁がひらひらと舞ってきた。
「卒業おめでとう」
優しい声が聞こえてきて、振り返ると、まるで桃色の花のように眩しい笑顔で微笑む彼。空には夢を語り合ったあの日と同じ雲一つない晴天が広がっている。
会えなくなっても、繋がっていられるように。
「ありがとう、恭弥先生」
そう言って、グータッチを交わしながら、笑顔で前を向いて歩き出した。