私に恋は大変結構です。

3 転校生
俺は林冬真。クラスの人気者――のはずだ。
今日、転校生が来た。
遠目からでもわかるくらい、笑顔が綺麗で、可愛かった。
……一目惚れだった。
でも、話しかける勇気が出なかった。
イライラして、最低なことを言ってしまった。
「お前、ブサイクだな!」
言った瞬間、後悔した。
蓮見さん、絶対傷ついただろうな。
どうしよう。
嫌われたくない。
――よし、美奈に電話しよう。
従姉妹の美奈は、なぜか恋愛に詳しい。
「もしもし?」
「なぁ、美奈……
転校生が可愛すぎて緊張して、ブサイクって言っちゃった」
「はぁ!?あんた何してんの!!
それ、完全アウトやから!」
耳が痛い。
「……俺、嫌われたくない」
それだけが、頭から離れなかった。

4 ハプニング
「ふんふんふふ〜ん♪」
今日は、最高に機嫌がいい。
だって、莉里たちとデパートに行くんだから。
鼻歌を歌いながら学校の正門を出た瞬間――
「蓮見紗良!!」
呼ばれて振り向くと、そこにいたのは林さんだった。
「なあに?
私、初対面の人に『ブス』って言うほど暇じゃないよ?」
にっこり笑ったけど、多分かなり不気味だった。
「……あの時は、ごめん」
俯く林さん。
「なんで、あんなこと言ったの?」
すると、林さんは顔を赤くして、言葉に詰まった。
「だって……だって……」
……正直、ちょっと面白かった。
「まぁ、気にしてないし。じゃあね」
早くここから逃げたい。
触らぬ神に祟りなし!
走り出した、そのとき。
「だって、お前が可愛いから」
――え?
聞き間違い。
そうだよね。走ってたし。
絶対、聞き間違い。

5 どうしようっ!
デパートは楽しかった。
さっきの出来事なんて、すっかり忘れていた。
でも、通学路を歩いていると、ふと考えてしまう。
なんで、あんなこと言ったんだろう。
考えれば考えるほど、学校に行きたくなくなる。
それでも、行かないわけにはいかない。
――聞こえなかったことにしよう。
クラスに入ると、林さんが一番に私のところへ来た。
「おはよ」
それだけ。
湊よりイケメンで、ファンクラブまであるらしい林冬真。
みんなは「優しい」って言うけど、私はまだ信じられない。
ふと、湊の視線が少し怖く感じた。
「なぁ、あいつといつ仲良くなったんだ?」
「仲良くないけど」
「……ならいい」
――え?どゆこと?
胸の奥に、小さな違和感が残った。
でもきっと、
誰だって大切な人が傷つけられたら怒る。
それだけのことだと、
私は自分に言い聞かせた。