遅ればせラブアフェア




「第一ね、あんたのそのスタンスが気に食わないのよ。勉強なんてなーんにもしてません、努力なんてしませんって涼しい顔しちゃってさ?そんな感じで簡単に一位掻っ攫っていくんだから本当嫌味な奴!」

「毎回お前が一人で盛り上がってるだけだろ」

「うう、今回だって……めちゃくちゃ頑張ったのに……これまでにないくらい頑張ったのにー!」

「お前、酔いすぎ。ほら、水飲め」


いつの間にかウェイターに頼んでくれていたお水を差し出され、そんな気遣いにすら腹が立つ。

だって、海里はいつだって冷静沈着で、対して私はいつだって必死。一人喚いて泣いて、本当に惨めだ。

私だって決して“できない奴”ではないのに。他の人から見たら十分優秀な部類に入るはずなのに……。


「……」

「……大丈夫か?」


目の前の男だから、私は勝てない。この“天才”を前に、私はずっと“凡人な敗者”のままなのだ。


「どうせ、私のこと馬鹿だと思ってるんでしょ?」

「は?」

「無能で、うるさくて……こんな嫁、本当は嫌なんでしょ?分かってるんだから」

「……」


頭がぐるぐるする。今月も海里に勝てなかった精神的ショックと、彼に勝つために限界を超えて頑張った体の疲労がお酒によって急激な眠気に変わる。

テーブルに両肘をついて頭を抱えていれば、席を立った海里がこちらにやってきた。


「おい、南萌。寝るな。帰るぞ」

「……なによぉ〜、触んないで」


腕を掴まれ立ち上がると、ふらりと足がおぼつかない。「触るな」「歩ける」と子どものように呟くが、身体はいうことを聞かず、仕方なく彼にもたれかかった。