「ふ、なんつー顔してんだよ」
「……あの、海里、」
ムニムニと頬を摘んで、からかい混じりにかけられる声。
「別にいいよ、無理しなくて」
「え……?」
「無理やりしたいわけじゃない」
「……」
私を上から見下ろしたまま優しく笑う海里は、微塵のいやらしさも見せず子どもをあやすように頭を撫でてくれるから……安心と申し訳なさでじわりと涙が浮かんでしまった。
中指の腹で涙を拭いつつ、「なんで泣くの。そんなに嫌だった?」と軽い声色で問われてすぐ。鼻にかかった声で「違うの」と否定する。
「だって……、昨日の夜からお風呂、入ってないし……」
「は?」
「海里に汚いって思われたら嫌だし、……わ、私、したことないから……痛いのかな、とか。海里を気持ちよく出来ないかも、とか……」
「……」
海里が優しいから。すごく、泣いちゃうくらい優しいから……。
ついつい何でも言ってもいいんじゃないかって気持ちになっちゃって、たぶん秘めておくべきことまで言った気がする。
「……我慢してやってるのに、悪魔だな」
「え?」
私が鼻をすするのと、海里がボソリとつぶやいたのはピッタリ同時。
何を言われたのだろうと不安になって眉を下げながら彼を見上げれば、呆れたようなため息と共にぎゅううと身体を抱きすくめられた。
「あのな、たとえお前が汗だくでベッタベタでも汚いとか思わねぇし」
「べ、ベタベタってほどでは……」
「南萌が初めてなのはこの間聞いたし、気持ちよくなりたいからするわけじゃねぇし」
不貞腐れたように呟かれた声に「え?……違うの?」とキョトンとした声を出せば、「ちげーの。誰でもいいとかじゃないの」と肩口にぐりぐりと額を押し付けられた。


