一瞬時が止まったみたいに固まった海里はふはっと笑みを溢し、「お前がそう言うなら会わない」と頭を撫でる。
「会わない」って言っているんだからそれでいいはずなのに、完全不貞腐れモードの私はそれだけでは納得できなくて。
私が言わなかったら会ってたのかよ、と。不満タラタラの涙目で睨みつけると、海里は何故だか嬉しそうに目尻を下げた。
「ふっ、嘘。言われなくても会うつもりなんてねーよ」
「……嘘つき。嫌い」
「ああ、じゃあもう嘘つかない」
「……」
ギュッと身体を拘束されて、全身が心臓になったみたいに恐ろしい速度で血液が巡る。
鼻腔いっぱいに海里の香りを取り込んで、緊張するのにちょっと落ち着くから変だ。
なんだかもっと近づきたくて、他の子に盗られたくない、なんて子どもみたいな独占欲が満ち満ちて。
「……海里、」
「っ、」
自分からも彼の背中に手を回せば、私を包む彼の腕の力がさらに強くなった。
「私ね、やっぱり、あんたと結婚する」
「は?」
グズグズと鼻を鳴らしながら告げた言葉に海里が首を捻る。
海里に他の女を選んでほしくない。でも、ヤキモチだなんて一生かけても認めたくない。
そんな私の精一杯の強がりから生まれた言葉は、頭の中で捻りに捻くれ口を離れる。
「可愛くて癒し系のご令嬢と幸せに、なんて許さない」
「……」
「あんたなんか、嫌いな私と結婚して不幸になればいいのよ」
「……ふふ、なるほど?」
全てを見透かしているようにクスクス笑いながら優しく背中を撫でる海里。
キュッと心臓が疼いて、もうどうしようもなくこいつから離れたくなくなって、離したくなくなって……。


