「ひどいっ……」と完全に被害者ぶって去っていくまりなさんの背中を見送っても大してスッキリはしなかった。
それよりこの後どうするか……。
背後には始終を見守った海里がいる。つまりは私の見事な悪役令嬢ぶりを目撃されているわけだ。
「南萌」
「……っ、」
言われることなんか分かっている。
さっきまで自由恋愛を提唱しておきながら他の女の子との会話を邪魔するなんて辻褄の合わない行動をしてしまったことは私が一番理解しているんだ。
「……トイレ」
「今行ったろうが」
「く、靴擦れが……」
「それなら俺もついて行く」
「……」
まりなさんを言い負かした勢いが嘘みたいに細い声。
つまらない嘘は見て見ぬ振りをして、逃げることを許して欲しいのに、逃げるなよと言わんばかりに手を取られれば、もうどうすることもできなかった。
「……離して」
「嫌だった?俺とあの子が話してるの」
「……」
静かに呟いた海里に黙秘権を使おうと思った。でも、やっぱり胃の底の方でグツグツと胃酸が沸騰して、ついつい口から嫌味が溢れる。
「……婚約者は私でしょ?」
「え、」
「私に見せつけるみたいにあの子と話す……海里が悪いんだからね」
「……」
震える声で吐き出されたそれは酷く不貞腐れたもので……。
彼の問いかけに対する答えとして、最も可愛げのない【YES】だったと思う。


