やっぱりただの揶揄いだった。そりゃあ、そう。だって海里にはいつも勝負を挑んでばかりで、女らしいところなんて一切見せてこなかったんだから。
好かれている方がおかしい。海里にどう思われていようがどうでもいい。私だってこいつのことなんか好きでもなんでもないし……
羞恥心をかき消すように頭の中でひたすら言い聞かせた。
異論なんかない。10年間抱えてきた海里への気持ちなんて純粋な敵対心のみ。……そのはずなのに。
「……ばかいり」
「ん?なんか言った?」
「言ってないわよ、根暗性悪男」
「ああ?」
どうしてこんなにも……残念な気持ちになるんだろう。チクチク心が痛くて喉元が苦しい。
チグハグな頭と心。自分が自分で分からない。
そんな初めての感覚が……気持ち悪くてひどく不快だった。
「南萌?」
「なに」
「怒った?」
「別に。あんたが私のこと好きなはずないし、あんたに褒められたって嬉しくないし」
「……」
ああ、なんて可愛くないんだろう。本当は嬉しかったくせに。
短所だとばかり思っていたところを褒められて、『可愛い』なんて海里が絶対に言わなさそうな言葉をもらえて。
ものすごく照れ臭かったけど、実はすごく喜んでしまっていた。結局は揶揄われただけだったからその分激しい羞恥心に襲われているのだけれど。
素直じゃないし、いつだって海里と話す時は喧嘩腰。キスされたって目を瞑れないし、可愛い反応なんてできないし。
周囲を見渡せば、同世代か私より若いくらいの女性が綺麗なドレスを身に纏って朗らかに会話を交わしている。
あの子たちが海里の婚約者だったら……素直に「海里に褒められて嬉しかった」「揶揄われて悲しかった」って言えたのかな。


