(うっ、……海里のことを可愛いと思う日が来るなんて……)
いつもは喚く私を簡単にあしらうような男なのに、私が言い返さなかったらこんな風に拗ねるなんて……。
言い得て妙なのは【かまってちゃん】。かまってちゃん海里はちょっと……ギャップで可愛すぎないか?
「海里がかまってちゃんなんて珍しい」
「かまってちゃん?」
「私に構って欲しくて仕方ないの。あーなるほど、いつも私のこと馬鹿にしてくるのもそういう理由なのね。ふふふ、お可愛いこと」
こんな機会は2度とない、と。いい女は一旦置いて、ここぞとばかりにいじってみれば、鏡越しの海里は「んー……」と瞳を宙に浮かせてから、「そうかもな」と後ろから私の首元に手を回す。
鏡を見れば私をゆるく拘束する海里と拘束される私。
驚いて僅かに開いた瞳も、みるみるうちに赤くなる耳も……できれば見たくなかったのに、ありのままを映し出す鏡は何とも罪深い。
「……分かったわよ。もういい、今日はちゃんと婚約者しなきゃだし。仲直りする」
完全に絆されてしまい、目を逸らしつつそう告げれば、「そ、よかった」と笑う海里。
全て手中というような余裕さは腹立たしいが、“嬉しい”が滲み出たその微笑みはやっぱりちょっと可愛いと思ってしまった。
(ダメだ、調子狂う……)
いつもどおり、海里のことを嫌いな私に戻らなければ……、と心を落ち着かせたいのに、「なぁ」と絶賛かまってちゃんな彼がぎゅっと腕を締めて抱きついてくるからそうもいかない。
「怒ってた?」
「……は?怒ってるわよ、今も」
弾むように、甘い声を耳に吹き込む海里。全く反省してないな?と思いつつ、こちらも声が柔らかくなるのは多分この体勢のせい。


