「嘘つき!」
「何が」
「絶対キスしようとしてた!」
「お前が欲求不満なだけじゃない?」
「……ぐあああ、口の減らない男め……」
「お互い様だな」
着飾っていても中身はやっぱりトムとジェリー。
絶対に確信犯のくせに涼しい顔してむっかつく。キスしたかったのは、私じゃなくて絶対に海里のはずなのに。
言い返したいけどきっとまた墓穴を掘る。きっとまたこいつのおもちゃにされるのがオチだ。
まだまだ文句を言い足りないところをグッと堪え、むうぅと不機嫌顔を携えたまま鏡の方に向き直る。
こいつにこれ以上時間を使うなんて無駄。こいつの気まぐれの道楽に翻弄されるのも無駄。こいつの真意とか、私のことどう思ってるのか、とか。そういうの全部、考えるだけ無駄なのだ。
「もう構ってやらない。全部無視してやる」
「ええ?そんな南萌おもしろくねーよ?」
「あらそう。それはありがたいことだわ」
「……」
真顔ながら揶揄い口調の海里を今度こそ上手くあしらえた。
よしよし、この調子……と心の中で自分を褒めてあげた刹那、海里が二の矢を打ってくる。
「……これ、背中開きすぎじゃねぇ?」
「ヒギャッ!」
ドレスから覗く背筋を指先でツーッとなぞられて、流石に無反応でいられるはずがない。


