至近距離で真っ直ぐに見つめてくる瞳にトクンと胸が跳ね、素直に唇を緩めてしまった。
すぐに指先でクイッと持ち上げられた顎。キュッと喉がしまって苦しくて、こんな距離でも毛穴の見えない綺麗な肌に見惚れたりして。
『この間もしたんだから、目くらい閉じれば?』
先日、会議室でキスされた後に言われたことを思い出したのは不可抗力。前回の学びから目を閉じてしまったのも、“海里に同じことで馬鹿にされたくない”という、ただそれだけだ。
「……南萌」
「っ、」
甘さを孕むやや低い声が名前を呼ぶ。
ゆっくりと近づいてくる気配にバクバクと心臓が高鳴って、海里にまでこの振動が伝わっているのではないかと思えば恥ずかしくて仕方がなかった。
顎に添えられた指に力が加わって、さらに大きく口を開かれる。
口の中を見られるだなんて恥ずかしい。一体、どんなキスをしようとしているんだ……なんて。
あまりの気恥ずかしさに茶化しの言葉のひとつやふたつ発してやろうかと目を開けたその瞬間……
「……あがっ?!!」
「あ、取れた」
「な、何?!」
「歯紅。ついてた」
「は、は、は、……はぁべぇにぃ〜〜?」
予想の裏の裏の、もう空中くらいを突かれ、思わずものすごい顔で発狂すると「ふっ、……そ、歯紅」とクツクツ笑いを噛み殺しながら指先ついたリップを見せられる。
この野郎、絶対、絶対、確信犯だろ。キスするふりして、私がその気になるの面白がってたんだろ〜〜?!!


