まんまと引っかかってしまった、とバツの悪い顔で「人を嘘つき呼ばわりしておいて、あんたの方がタチの悪い嘘つきじゃない」と口撃するが、
「別に俺は嘘はついてないし」
「……は?」
意味深な瞳で見下ろされ、思わず固まってしまう。
嘘はついてない、つまり『似合ってる。綺麗だ』なんて、こいつにあるまじきキザなセリフは本心だったという意味で……。
いやいや、騙されるな。またこうやって惑わされる私を見て楽しんでいる説の方が圧倒的に濃厚だ!!
「ま……またからかって!もう騙されないし!」
「別に、お好きにどうぞ。でもまあ、一般的にお前は美人の部類に入ってると思ってるよ」
「なっ……?!」
「……あ、南萌」
「へ、ちょ、なに?!」
真顔で嘯《うそぶ》くオオカミ少年は感情の希薄な褒め言葉で私を翻弄した挙句、いきなりグッと顔を近づけてくるのだから本当にどうしてくれようか……。
頬に影を落とす長いまつ毛が下を向き、じっと見つめる先には私の唇。
ティントリップの上からグロスで艶を足した可愛いピンク色のソコは今日のメイクのお気に入りポイントだ。
このグロスのキャッチコピーは確か“キスしたくなる唇”だったかもしれないが、私のこれはそういった効能を求めて施されたものではない。断じて、決して、絶対に!
それなのに……——
「南萌、口開けて?」
「は、……はい?」
「いいから」
「……」


