私の世話係の真島さんに「ありがとうございます。ここで準備が終わるの待つので大丈夫ですよ」と声をかけた海里はパタリと部屋の入り口のドアを閉めてこちらに近づいてくる。
パタパタと床を叩くスリッパの音に、大きな音を立てる心臓。どんな顔で見ればいいか分からなくて、ドレッサーの上に広げたアクセサリーを選ぶフリでやり過ごす。
極限まで近づいた人の気配。バレないようにごくりと喉を鳴らした直後、正面の鏡に映り込む、私以外の姿を視界の隅に捉えた。
「……へぇ、馬子にも衣装だな」
「っ、」
「ちゃんと令嬢に見える。……黙ってれば」
「う、うるさい。褒めるならちゃんと褒めなさいよ!」
特級の嫌味を前に少しだけ気まずさが緩和して、斜め後ろを振り返って睨みつけたのだが……
「似合ってる。綺麗だ」
「なっ?!!」
真顔のまますんなり褒められて、一気に死にそうになった。
いつも口撃しかしてこない男から、不意打ちすぎる褒め言葉。思わず目をかっ開いて体を仰け反らせれば、ククッと喉を鳴らして「ちょろい女」と笑われる。


