「お嬢さま、海里さんがお待ちですよ。お支度は済まれましたか?」
「……うう、まだかかるって言っておいて!」
日曜の昼下がり。
メイクとヘアセットを終えてから30分。そこから10分後に海里が迎えに来たと知らされたが、すぐに顔を合わせる気になれず、無駄にイヤリングをいじって時間を稼ぐこと早20分。
「おいこら、嘘つき。準備終わってんじゃねーか」
「……っ」
呆れた声に弾かれたように背後を振り返れば、痺れを切らした海里が腕を組んで立っていた。
「なっ、……ちょっと、勝手に部屋来ないでよ!」
「ほぉー、郊外までわざわざ迎えに来てやった婚約者に向かってよくそんなことが言えんな?」
「そういう嫌味言われるだろうから、現地集合でいいって言ったのに……」
「もうすぐ婚約する男女が現地集合って、不仲を疑われんだろ」
「……」
実際不仲だろうが〜と叫んでやりたかったが、キリがないのでやめておいた。
今日、都内のホテルで行われる土方HDの周年記念パーティーは5年刻みで開催されており、海里の婚約者として出席するのは今回で2度目。
前回はまだ大々的な婚約発表はしていなかったのでスロープアシスト株式会社の長女として挨拶回りをしていたが、今回ばかりはそうもいかない。
来年度に控えた結婚式に向け、土方HDの次男の嫁(仮)として関係者にご挨拶するのが今日の私の務めなのだ。


