「……」
「ご馳走さま」
「……んむっ?!」
「この間もしたんだから、目くらい閉じれば?」
唇が離れたと思えば、嘲笑うようにペロリと唇を舐められた。
目を閉じればと言われたのに、正反対に目を見開く私を見てクスリと笑う海里は、ぽんぽんと頭を撫でながら顔を離す。
「な、何……今の」
「キス。知らねーの?もっかいしてやろーか?」
「違う!いらない!そういうことじゃない!」
「じゃ、なに?」
「……っ、」
大したことでもなさそうに。まるでこんなことくらいで取り立てるこっちがおかしいみたいに。
見慣れた無表情。それでもその瞳の奥は、まんまと取り乱す私のことを笑ってる。
「な、なんでキスするのよ、この間から……」
「お礼って言ったろ?」
「おかしいじゃない、こんなのがお礼になるなんて」
「……さあ?そこら辺は自分でよく考えろ。せいぜい俺が発した言葉、一言一句拾って頭の中いっぱいにすればいい」
「……、」
頬に手のひらを添えて、洗脳でもするみたいに瞳の奥に語りかけるなんてずるい。
言われなくたって、先週からずっとあんたのことで悩まされているこの頭で……さらにあんたのことを考えろだなんて、どこまで図々しいやつなんだ。
「す、好きな人とじゃなきゃ、嫌って……」
「ん?」
「この間、言ってたくせに」
「ああー」
胸が苦しくって、声が出しづらくって。震える声で言葉を紡ぎながら、なんとか海里を見上げれば、一瞬何かを考えるように黒目を宙に浮かせた海里が真面目な顔で口を開いた。


