「……はぁ、この間ので何か変わるかと思えば……本当ポンコツだな」
「っ?!は?ポンコツ?!誰がよ!」
100%の善意と優しさで発した言葉に対して、返ってきたのは何故だか大きなため息。
突然の暴言に食ってかかると、「お前だよ、お前」と睨まれて、すれ違いざまに髪の毛をぐしゃぐしゃと乱された。
「やぁぁ!何すんのよ!」
「こっちのセリフだ。いい加減傷つくっつーの」
「はぁ?」
そのまま会議室を出て行こうとする海里を追えば、ドアノブに手をかけたところでクルリと振り返り、腰を屈めて顔を覗き込んでくる。
「……な、なに?近い」
「お前に言われなくても、好きな女は勝手に口説くんで。お構いなく」
「んぎゃあ!こら、またっ!」
ぐしゃぐしゃあ〜っと、せっかく整えた髪を先ほどよりもボサボサにされて、社長令嬢にあるまじき声で叫んでしまう。
「ちょっと!」と服を掴んで睨み上げる私に、「睨まれても謝らねーから」と言いながらフッと表情を緩める海里。
その瞬間、細められた末広二重にドキッと心臓が揺れたのは……その笑顔がB病院で見せていた笑顔とは全く異なるものだったから。
(……ほら、やっぱり笑うと今以上にモテるよ……)
心の中で確信すると同時、チクリと胸が痛んだ。
『お前に言われなくても、好きな女は勝手に口説くんで。お構いなく』
連動するように思い出したさっきの言葉に今度はモヤっと不穏な気持ちが広がって……。
なんだか、感情が忙しい。変なの。何かの病気だろうか。


