「仕事できるできないに性別なんて関係ない。でも体力面で劣るのは明らかだろ。だから、こういうのは男に頼め。俺も、お前の方が得意なことはお前に頼むから」
「……うん」
誰の言葉でもない。海里の言葉だから心に染みる。
彼に出会ってから10年。幾度となく勝負を挑んできた。勉強も、スポーツも……負けて、負けて、負けて。
ある時海里が友人と話しているところを聞いてしまったことがあった。私のことを揶揄うような口調で『何度も負けて可哀想じゃん。たまには手を抜いてやればいいのに』って話しているところ。
見下されているみたいですごく腹立たしくて、すぐにでも二人の会話に怒鳴り込んでやろうって思ったけれど……——
海里は怪訝そうな声で言った。『は?手抜いたら負けるに決まってんじゃん』って。
こいつのいいところは、私との勝負で一度も手を抜かないでくれるところだ。
情けをかけることなんてない。いつだってこてんぱんに私を打ち負かす。
毎回すごく悔しくて、むかついて、腹立たしくて……でも。
彼と対等な立場でいられることが、私が頑張る原動力だった。
自分のことを“文化系”と称しつつ、私が一人で運んでいた時の数倍の速さで進んでいくディスプレイ。私は進路方向を決めるくらいの役割で何の力も入っていないのだから、このディスプレイを運んでいるのはほぼ海里の力だ。
本当は一人で運べるくせに、私のプライドを傷つけないために仕事をくれているんだと思う。
こういう見えない気遣いを結構してくれる男であることはちゃんと知っている。
女ということについて、区別はするけど差別はしない。誰にだって平等で、興味がないようでよく人を見ていて……。
(本当、……勝てないんだよなぁ。こいつには)
ムカつくけど、本当に癪だけど。こういうところは、人として信用しているんだ、一応。


